Soranoha

職業婦人に生理休暇を!

しょくぎょうふじんにせいりきゅうかを!

宮本 百合子

一般の婦人の勤労生活と毎月の生理的変化との関係が、新らしい注意で見られることは実によいと思う。日本では年々労働にしたがう若い女のひとの数は殖えており、先日それぞれの道の専門家が新聞で語っていたとおり、大衆の経済事情が近頃わるくなって来たにつれ、若い婦人の就業年限がのびて、婚期もおくれて来ているのが、今日の実際である。昔から、婦人の犯罪や自殺と生理的異常との関係は常識の上でも理解されているのであり、そういう統計は出ているけれども、例えば大西博士の「労働医学概論」などで婦人労働者の数など調べられてはいても、それ等の婦人労働者の生理的異常の時期の待遇等は観察からとり落されている。その本に序文を書いておられる有名な倉敷労働科学研究所の暉峻義等氏でさえ、著者がその点にふれていないことには言及しておられないのである。

成年の女に月経は自然の現象ではあるけれども、現代の労働の或る種のものは、その自然現象に阻害を与えるような悪事情で女を働らかせている。その面に私たちの関心は向けられる。自然のことなのであるから、それが自然に処理され、自然に経験されてゆくような事情を、働く条件の中に求めてゆくわけである。苦しくなんぞないのが当り前だ、と云っても、あたり前でない状態で働くから、苦しくなるということが尠くない。例えば厠へ立つことが自由でない。何時間も立ったまま働かねばならない。これらは家に暮す女の知らぬ苦痛である。こういう問題は、当然現代社会の性質と婦人のおかれている諸関係に思いを到らせるのである。自働ベルトを一時間毎に二分止めて、その間に平常軽い体の屈伸運動をさせるだけでさえ、婦人の健康には大なるプラスであることを一般が知って欲しいと思う。〔一九三七年五月〕

底本 / Source edition

底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
1952(昭和27)年8月発行
初出:「婦人公論」
1937(昭和12)年5月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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書誌 / Bibliography
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宮本 百合子「職業婦人に生理休暇を!──自然なことを自然なように」(新字新仮名)、底本『宮本百合子全集 第十四巻』新日本出版社、1979年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 003091_000311, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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