かつて、きゝし折りなき楽の音！

今宵、心にしのび入る。

<ruby><rb>絃</rb><rt>いと</rt></ruby>はわななき震ひ、

果ては――蒼き涙にむせぶ。

眼に見ゑず、心にとまるメロディよ！

知らず、深き迷ひにいらしむ。

吾れはなつかしき<ruby><rb>女</rb><rt>ひと</rt></ruby>の声とや聞き、

底なき闇の中、メロディの消ゆる処へ

しづまむ。