人物　バナナン大将。

特務<ruby><rb>曹長</rb><rt>そうちょう</rt></ruby>、

曹長、

兵士、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十。

場処　不明なるも劇中マルトン原と呼ばれたり。

時　　不明。

幕あく。

<ruby><rb>砲弾</rb><rt>ほうだん</rt></ruby>にて破損せる古き穀倉の内部、<ruby><rb>辛</rb><rt>から</rt></ruby>くも<ruby><rb>全滅</rb><rt>ぜんめつ</rt></ruby>を<ruby><rb>免</rb><rt>まぬ</rt></ruby>かれしバナナン軍団、マルトン原の臨時<ruby><rb>幕営</rb><rt>ばくえい</rt></ruby>。

右手より曹長先頭にて兵士一、二、三、四、五、登場、一列<ruby><rb>四壁</rb><rt>しへき</rt></ruby>に沿いて行進。

曹長「一時半なのにどうしたのだろう。

バナナン大将はまだやってこない

<ruby><rb>胃時計</rb><rt>ストマクウオッチ</rt></ruby>はもう十時なのに

バナナン大将は帰らない。」

正面壁に沿い左向き<ruby><rb>足踏</rb><rt>あしぶ</rt></ruby>み。

（<ruby><rb>銅鑼</rb><rt>どら</rt></ruby>の音）

左手より、特務曹長<ruby><rb>並</rb><rt>ならび</rt></ruby>に兵士六、七、八、九、十　五人登場、一列、壁に沿いて行進、右隊足踏みつつ挙手の礼　左隊答礼。

特務曹長「もう二時なのにどうしたのだろう、

バナナン大将はまだ来ていない

ストマクウオッチはもう十時なのに

バナナン大将は帰らない。」

左隊右壁に沿い足踏み（銅鑼）

曹長特務曹長（<ruby><rb>互</rb><rt>たがい</rt></ruby>に進み寄り足踏みつつ<ruby><rb>唱</rb><rt>うた</rt></ruby>う）

「<ruby><rb>糧食</rb><rt>りょうしょく</rt></ruby>はなし　四月の寒さ

ストマクウオッチももうめちゃめちゃだ。」

合唱「どうしたのだろう、バナナン大将

もう<ruby><rb>一遍</rb><rt>いっぺん</rt></ruby>だけ　見て来よう。」別々に退場

（<ruby><rb>銅鑼</rb><rt>どら</rt></ruby>）

右隊登場、<ruby><rb>総</rb><rt>すべ</rt></ruby>て始めのごとし。<ruby><rb>可成</rb><rt>かなり</rt></ruby><ruby><rb>疲</rb><rt>つか</rt></ruby>れたり。

曹長「もう四時なのにどうしたのだろう、

バナナン大将はまだ来ていない

もう四時なのにどうしたのだろう。

バナナン大将は帰らない。」

左隊登場

「もう四時半なのにどうしたのだろう、

バナナン大将はまだ来ていない

もう五時なのにどうしたのだろう

バナナン大将は　帰らない。」

（銅鑼）

曹長特務曹長

「大将ひとりでどこかの<ruby><rb>並木</rb><rt>なみき</rt></ruby>の

<ruby><rb>苹果</rb><rt>りんご</rt></ruby>を<ruby><rb>叩</rb><rt>たた</rt></ruby>いているかもしれない

大将いまごろどこかのはたけで

<ruby><rb>人蔘</rb><rt>にんじん</rt></ruby>ガリガリ　<ruby><rb>噛</rb><rt>か</rt></ruby>んでるぞ。」

（銅鑼）

右隊入場、<ruby><rb>著</rb><rt>いちじる</rt></ruby>しく疲れ<ruby><rb>辛</rb><rt>かろ</rt></ruby>うじて歩行す。

曹長「七時半なのにどうしたのだろう

バナナン大将はまだ来ていない

七時半なのにどうしたのだろう

バナナン大将は　帰らない。」

左隊登場　最<ruby><rb>労</rb><rt>つか</rt></ruby>れたり。

曹長特務曹長

「もう八時なのにどうしたのだろう

バナナン大将は　まだ来ていない。

もう八時なのにどうしたのだろう

バナナン大将は　帰らない。」

（銅鑼）

立てるもの合唱（きれぎれに）

「いくさで死ぬならあきらめもするが

いまごろ<ruby><rb>餓</rb><rt>う</rt></ruby>えて死にたくはない

ああただひときれこの世のなごりに

バナナかなにかを　食いたいな。」

（共に<ruby><rb>倒</rb><rt>たお</rt></ruby>る）（<ruby><rb>銅鑼</rb><rt>どら</rt></ruby>）

バナナン大将登場。バナナのエボレットを<ruby><rb>飾</rb><rt>かざ</rt></ruby>り<ruby><rb>菓子</rb><rt>かし</rt></ruby>の<ruby><rb>勲章</rb><rt>くんしょう</rt></ruby>を胸に<ruby><rb>満</rb><rt>みた</rt></ruby>せり。

バナナン大将

「つかれたつかれたすっかりつかれた

<ruby><rb>脚</rb><rt>あし</rt></ruby>はまるっきり　二本のステッキ

いったいすこぅし飲み過ぎたのだし

馬肉もあんまり食いすぎた。」

（<ruby><rb>叫</rb><rt>さけ</rt></ruby>ぶ。）「何だ。まっくらじゃないか。今ごろになってまだあかりも<ruby><rb>点</rb><rt>つ</rt></ruby>けんのか。」

兵士等辛うじて立ちあがり挙手の礼。

大将「<ruby><rb>灯</rb><rt>あかり</rt></ruby>をつけろ、<ruby><rb>間抜</rb><rt>まぬ</rt></ruby>けめ。」

曹長点燈す。兵士等大将のエボレット勲章等を見て食せんとするの<ruby><rb>衝動</rb><rt>しょうどう</rt></ruby><ruby><rb>甚</rb><rt>はなはだ</rt></ruby>し。

大将「間抜けめ、どれもみんなまるで<ruby><rb>泥</rb><rt>どろ</rt></ruby>人形だ。」

脚を重ねて<ruby><rb>椅子</rb><rt>いす</rt></ruby>に座す。ポケットより新聞と老眼鏡とを取り出し<ruby><rb>殊更</rb><rt>ことさら</rt></ruby>に顔をしかめつつこれを読む。しきりにゲップす。やがて<ruby><rb>睡</rb><rt>ねむ</rt></ruby>る。

曹長（低く。）「大将の勲章は実に<ruby><rb>甘</rb><rt>うま</rt></ruby>そうだなあ。」

特務曹長「それは甘そうだ。」

曹長「食べるというわけには行かないものでありますか。」

特務曹長「それは<ruby><rb>蓋</rb><rt>けだ</rt></ruby>しいかない。軍人が<ruby><rb>名誉</rb><rt>めいよ</rt></ruby>ある勲章を食ってしまうという前例はない。」

曹長「食ったらどうなるのでありますか。」

特務曹長「軍法会議だ。それから<ruby><rb>銃殺</rb><rt>じゅうさつ</rt></ruby>にきまっている。」間、兵卒一同再び倒る。

曹長（<ruby><rb>面</rb><rt>おもて</rt></ruby>をあぐ。）「上官。私は決心いたしました。この饑餓陣営の中に<ruby><rb>於</rb><rt>お</rt></ruby>きましては<ruby><rb>最早</rb><rt>もはや</rt></ruby>私共の運命は<ruby><rb>定</rb><rt>さだ</rt></ruby>まってあります。戦争の<ruby><rb>為</rb><rt>ため</rt></ruby>にでなく飢餓の為に<ruby><rb>全滅</rb><rt>ぜんめつ</rt></ruby>するばかりであります。かの巨大なるバナナン軍団のただ十六人の生存者われわれもまた死ぬばかりであります。この際私が将軍の勲章とエボレットとを<ruby><rb>盗</rb><rt>ぬす</rt></ruby>みこれを食しますれば私共は死ななくても済みます。そして私はその責任を負って軍法会議にかかりまた銃殺されようと思います。」

特務曹長「曹長、よく<ruby><rb>云</rb><rt>い</rt></ruby>って<ruby><rb>呉</rb><rt>く</rt></ruby>れた。貴様だけは殺さない。おれもきっと<ruby><rb>一緒</rb><rt>いっしょ</rt></ruby>に行くぞ。十の生命の代りに二人の命を投げ出そう。よし。さあやろう。集まれっ。気を付けっ。右ぃおい。直れっ。番号。」

兵士「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、」

特務曹長「よし。閣下はまだおやすみだ。いいか。われわれは軍律上少しく変則ではあるがこれから食事を始める。」兵士<ruby><rb>悦</rb><rt>よろこ</rt></ruby>ぶ。

曹長（一足進む。）

特務曹長「いや、盗むというのはいかん。もっと正々堂々とやらなくちゃいけない。いいか。おれがやろう。」

特務曹長バナナン大将の前に進み直立す。曹長以下これに従い一列に<ruby><rb>並</rb><rt>なら</rt></ruby>ぶ。

特務曹長（挙手、叫ぶ。）「閣下！」

バナナン大将（<ruby><rb>徐</rb><rt>おもむろ</rt></ruby>に<ruby><rb>眼</rb><rt>め</rt></ruby>を開く。）「何じゃ、そうぞうしい。」

特務曹長「閣下の御勲功は実に四海を照すのであります。」

大将「ふん、それはよろしい。」

特務曹長「閣下の御名誉は<ruby><rb>則</rb><rt>すなわ</rt></ruby>ち私共の名誉であります。」

大将「うん。それはよろしい。」

特務曹長「閣下の勲章は<ruby><rb>皆</rb><rt>みな</rt></ruby>実に立派であります。私共は閣下の勲章を<ruby><rb>仰</rb><rt>あお</rt></ruby>ぎますごとに実に<ruby><rb>感激</rb><rt>かんげき</rt></ruby>してなみだがでたりのどが鳴ったりするのであります。」

大将「ふん、それはそうじゃろう。」

特務曹長「<ruby><rb>然</rb><rt>しか</rt></ruby>るに私共は<ruby><rb>未</rb><rt>いま</rt></ruby>だ不幸にしてその機会を得ず<ruby><rb>充分</rb><rt>じゅうぶん</rt></ruby>適格に閣下の勲章を拝見するの光栄を所有しなかったのであります。」

大将「それはそうじゃ、今までは<ruby><rb>忙</rb><rt>いそ</rt></ruby>がしかったじゃからな。」

特務曹長「閣下。この機会をもちまして私共一同にとくとお示しを得たいものであります。」

大将「それはよろしい。どの勲章を見たいのだ。」

特務曹長「一番大きなやつから。」

大将「これが一番大きいじゃ。ロンテンプナルール勲章じゃ。」胸より最大なる勲章を外し特務曹長に<ruby><rb>渡</rb><rt>わた</rt></ruby>す。

特務曹長「これはどの<ruby><rb>戦役</rb><rt>せんえき</rt></ruby>でご受領なされたのでありますか。」

大将「<ruby><rb>印度</rb><rt>インド</rt></ruby>戦争だ。」

特務曹長「このまん中の青い所はほんもののザラメでありますか。」

大将「ほんとうのザラメとも。」

特務曹長「実に立派であります。」（曹長に渡す。曹長兵卒一に渡す。兵卒一直ちにこれを<ruby><rb>嚥下</rb><rt>えんか</rt></ruby>す。）

特務曹長「次のは何でありますか。」

大将「ファンテプラーク章じゃ。」外す。

特務曹長「あまり光って眼がくらむようであります。」

大将「そうじゃ。それは<ruby><rb>支那</rb><rt>しな</rt></ruby>戦のニコチン戦役にもらったのじゃ。」

特務曹長「立派であります。」

大将「それはそうじゃろう」（兵卒二これを嚥下す。）

大将「どうじゃ、これはチベット戦争じゃ。」

特務曹長「なるほど<ruby><rb>西蔵</rb><rt>チベット</rt></ruby>馬のしるしがついて<ruby><rb>居</rb><rt>お</rt></ruby>ります。」（兵卒三これを嚥下す。）

大将「これは<ruby><rb>普仏</rb><rt>ふふつ</rt></ruby>戦争じゃ、」

特務曹長「なるほどナポレオンポナパルドの首のしるしがついて居ります。<ruby><rb>然</rb><rt>しか</rt></ruby>し閣下は普仏戦争に御参加になりましたのでありますか。」

大将「いいや、六十銭で買ったよ。」

特務曹長「なるほど、実に立派であります。六十銭では安すぎます。」

大将「うん、」（兵卒四これを嚥下す。）

特務曹長「その次の勲章はどれでありますか。」

大将「これじゃ、」

特務曹長「これはどちらから<ruby><rb>贈</rb><rt>おく</rt></ruby>られたのでありますか。」

大将「それはアメリカだ。ニュウヨウクのメリケン粉株式会社から贈られたのだ。」

特務曹長「そうでありますか。<ruby><rb>愕</rb><rt>おどろ</rt></ruby>くべきであります。」

（兵卒五これを嚥下す。）

特務曹長「次はどれでありますか。」

大将「これじゃ、」

特務曹長「実にめずらしくあります。やはり支那戦争でありますか。」

大将「いいや。支那の大将と<ruby><rb>豚</rb><rt>ぶた</rt></ruby>を五<ruby><rb>匹</rb><rt>ひき</rt></ruby>でとりかえたのじゃ。」

特務曹長「なるほど、ハムサンドウィッチですな。」（兵卒六これを嚥下す。）

大将「これはどうじゃ。」

特務曹長「立派であります。何勲章でありますか。」

大将「むすこからとりかえしたのじゃ。」（兵卒七嚥下。）

特務曹長「その次は、」

大将「これはモナコ王国に<ruby><rb>於</rb><rt>おい</rt></ruby>てばくちの番をしたとき<ruby><rb>貰</rb><rt>もら</rt></ruby>ったのじゃ。」

特務曹長「はあ実に<ruby><rb>恐</rb><rt>おそ</rt></ruby>れ入ります。」（兵卒八嚥下。）

大将「これはどうじゃ。」

特務曹長「どこの勲章でありますか。」

大将「手製じゃ手製じゃ。わしがこさえたのじゃ。」

特務曹長「なるほど、立派なお作であります。次のを拝見ねがいます。」（兵卒九嚥下。）

大将「これはなアフガニスタンでマラソン競争をやってとったのじゃ。」（兵卒十嚥下。）

特務曹長「なるほど次はどれでありますか。」

大将「もう二つしかないぞ。」

特務曹長（兵卒を検して）「もう二つで丁度いいようであります。」

大将「何が。」

特務曹長（<ruby><rb>烈</rb><rt>はげ</rt></ruby>しくごまかす。）「そうであります。」

大将「勲章か。よろしい。」（外す。）

特務曹長「これはどちらから贈られましたのでありますか。」

大将「イタリヤごろつき組合だ。」

特務曹長「なるほど、ジゴマと書いてあります。」（曹長に）「おい、やれ。」（曹長嚥下す。）

特務曹長「実に立派であります。」

大将「これはもっと立派だぞ。」

特務曹長「これはどちらからお受けになりましたのでありますか。」

大将「ベルギ戦役マイナス十五里進軍の際スレンジングトンの街道で拾ったよ。」

特務曹長「なるほど。」（嚥下す。）「少し馬の<ruby><rb>糞</rb><rt>ふん</rt></ruby>はついて居りますが結構であります。」

大将「どうじゃ、どれもみんな立派じゃろう。」

一同「実に結構でありました。」

大将「結構でありました？　いかんな。物の云いようもわからない。結構でありますと云うもんじゃ。ありましたと云えば過去になるじゃ。」

一同「結構であります。」

特務曹長「ええ、<ruby><rb>只今</rb><rt>ただいま</rt></ruby>のは実は現在<ruby><rb>完了</rb><rt>かんりょう</rt></ruby>のつもりであります。ところで閣下、この好機会をもちまして<ruby><rb>更</rb><rt>さら</rt></ruby>に閣下の<ruby><rb>燦爛</rb><rt>さんらん</rt></ruby>たるエボレットを拝見いたしたいものであります。」

大将「ふん、よかろう。」

（エボレットを渡す。）

特務曹長「実に<ruby><rb>甚</rb><rt>はなはだ</rt></ruby>しくあります。」

大将「うん。<ruby><rb>金無垢</rb><rt>きんむく</rt></ruby>だからな。<ruby><rb>溶</rb><rt>と</rt></ruby>かしちゃいかんぞ。」

特務曹長「はい<ruby><rb>大丈夫</rb><rt>だいじょうぶ</rt></ruby>であります。後列の方の六人でよく拝見しろ。」（渡す。最後の六人これを受けとり直ちに一箇ずつちぎる。）

大将「いかん、いかん、エボレットを<ruby><rb>壊</rb><rt>こわ</rt></ruby>しちゃいかん。」

特務曹長「いいえ、すぐ組み立てます。もう片っ方拝見いたしたいものであります。」

大将「ふん、あとですっかり組み立てるならまあよかろう。」

特務曹長「なるほど金無垢であります。すぐ組み立てます。」（一箇をちぎり曹長に渡す。以下これに<ruby><rb>倣</rb><rt>なら</rt></ruby>う。<ruby><rb>各</rb><rt>おのおの</rt></ruby>皮を<ruby><rb>剥</rb><rt>む</rt></ruby>く。）

大将（愕く。）「あっいかんいかん。皮を剥いてはいかんじゃ。」

特務曹長「急ぎ<ruby><rb>呑</rb><rt>の</rt></ruby>み下せいおいっ。」（一同<ruby><rb>嚥下</rb><rt>えんか</rt></ruby>。）

大将（泣く。）「ああ情けない。犬め、<ruby><rb>畜生</rb><rt>ちくしょう</rt></ruby>ども。<ruby><rb>泥</rb><rt>どろ</rt></ruby>人形ども、<ruby><rb>勲章</rb><rt>くんしょう</rt></ruby>をみんな食い居ったな。どうするか見ろ。情けない。うわあ。」

（泣く。）（兵卒<ruby><rb>悄然</rb><rt>しょうぜん</rt></ruby>たり。）

（兵卒らこの時<ruby><rb>漸</rb><rt>ようや</rt></ruby>く<ruby><rb>饑餓</rb><rt>きが</rt></ruby>を回復し良心の<ruby><rb>苛責</rb><rt>かしゃく</rt></ruby>に<ruby><rb>勝</rb><rt>た</rt></ruby>えず。）

兵卒三「おれたちは恐ろしいことをしてしまったなあ。」

兵卒十「全く<ruby><rb>夢中</rb><rt>むちゅう</rt></ruby>でやってしまったなあ。」

兵卒一「勲章と<ruby><rb>胃袋</rb><rt>いぶくろ</rt></ruby>にゴム糸がついていたようだったなあ」

兵卒九「将軍と国家とにどうおわびをしたらいいかなあ。」

兵卒七「おわびの方法が無い。」

兵卒五「死ぬより仕方ない。」

兵卒三「みんな死のう、自殺しよう。」

曹長「いいや、みんなおれが悪いんだ。おれがこんなことを発案したのだ。」

特務曹長「いいや、おれが責任者だ。おれは死ななければならない。」

曹長「上官、私共二人はじめの<ruby><rb>約束</rb><rt>やくそく</rt></ruby>の通りに死にましょう。」

特務曹長「そうだ。おいみんな。おまえたちはこの事件については何も知らなかった。悪いのはおれ達二人だ。おれ達はこの責任を負って死ぬからな、お前たちは決して短気なことをして<ruby><rb>呉</rb><rt>く</rt></ruby>れるな。これからあともよく軍律を守って国家のためにつくしてくれ」

兵卒一同「いいえ、だめであります。だめであります。」

特務曹長「いかん。貴様たちに命令する。将軍のお<ruby><rb>詞</rb><rt>ことば</rt></ruby>のあるうち動いてはならん。気を付けっ。」兵卒等直立。

特務曹長「曹長、さあ<ruby><rb>支度</rb><rt>したく</rt></ruby>しよう。」（ピストルを出す。）「<ruby><rb>祈</rb><rt>いの</rt></ruby>ろう。一所に。」

特務曹長「饑餓陣営のたそがれの中

<ruby><rb>犯</rb><rt>おか</rt></ruby>せる罪はいとも深し

ああ夜のそらの青き火もて

われらがつみをきよめたまえ。」

曹長「マルトン原のかなしみのなか

ひかりはつちにうずもれぬ

ああみめぐみのあめを下し

われらがつみをゆるしたまえ。」

合唱「ああ、みめぐみの雨をくだし

われらがつみをゆるしたまえ。」

（特務曹長ピストルを<ruby><rb>擬</rb><rt>ぎ</rt></ruby>し<ruby><rb>将</rb><rt>まさ</rt></ruby>に自殺せんとす。）

（バナナン大将この時まで<ruby><rb>瞑目</rb><rt>めいもく</rt></ruby>したるも<ruby><rb>忽</rb><rt>たちま</rt></ruby>ちにして立ちあがり<ruby><rb>叫</rb><rt>さけ</rt></ruby>ぶ。）

大将「止まれ、やめぃ。」

（特務曹長ピストルを擬したるまま<ruby><rb>呆然</rb><rt>ぼうぜん</rt></ruby>として<ruby><rb>佇立</rb><rt>ちょりつ</rt></ruby>す。大将ピストルを<ruby><rb>奪</rb><rt>うば</rt></ruby>う。）

バナナン大将「もうわかった。お前たちの心底は見届けた。お前たちの誠心に<ruby><rb>較</rb><rt>くら</rt></ruby>べてはおれの勲章などは実に何でもないじゃ。

おお神はほめられよ。実におん<ruby><rb>眼</rb><rt>め</rt></ruby>からみそなわすならば勲章やエボレットなどは<ruby><rb>瓦礫</rb><rt>がれき</rt></ruby>にも<ruby><rb>均</rb><rt>ひと</rt></ruby>しいじゃ。」

特務曹長「将軍、お申し訳けのないことを<ruby><rb>致</rb><rt>いた</rt></ruby>しました。」

曹長「将軍、私に死を下されませ。」

バナナン大将「いいや、ならん。」

特務曹長「けれどもこれから私共は毎日将軍の<ruby><rb>軍装</rb><rt>ぐんそう</rt></ruby>拝しますごとに<ruby><rb>烈</rb><rt>はげ</rt></ruby>しく良心に責められなければなりません。」

大将「いいや、今わしは神のみ力を受けて新らしい体操を発明したじゃ。それは名づけて生産体操となすべきじゃ。従来の不生産式体操と<ruby><rb>自</rb><rt>おのずか</rt></ruby>ら<ruby><rb>撰</rb><rt>せん</rt></ruby>を異にするじゃ。」

特務曹長「閣下、何とぞその訓練をいただきたくあります。」

大将「ふん。それはもちろんよろしい。いいか。

では、集れっ。（<ruby><rb>総</rb><rt>すべ</rt></ruby>て号令のごとく行わる。）ション。右ぃ習え。直れっ。番号。」

兵士「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二、」

兵士<ruby><rb>伍</rb><rt>ご</rt></ruby>を組む。

大将「前列二歩前へおいっ。<ruby><rb>偶数</rb><rt>ぐうすう</rt></ruby>一歩前へおいっ。」

大将「よろしいか。これから生産体操をはじめる。第一果樹<ruby><rb>整枝</rb><rt>せいし</rt></ruby>法、わかったか。三番。」

兵卒三「わかりました。果樹整枝法であります。」

大将「よろしい。果樹整枝法、その一、ピラミッド、一の号令でこの形をつくる。二で直るいいか」

大将<ruby><rb>両腕</rb><rt>りょううで</rt></ruby>を上げ整枝法のピラミッド形をつくる。

大将「いいか。果樹整枝法、その一、ピラミッド。一、よろし。二、よろし、一、二、一、二、一、やめい。」

大将「いいか次はベース。ベース、一、の号令でこの形をつくる。二で直る。いいか。わかったか。五番。」

兵卒五「はいっわかりました。ベース。<ruby><rb>盃状</rb><rt>はいじょう</rt></ruby>仕立であります。」

大将「よろしい。果樹整枝法その二、ベース一。」

兵卒「一、」

大将「二、一、二、一、二、一、二、やめい。」

大将「次は果樹整枝法その三、カンデラーブル。ここでは二枝カンデラーブル、Ｕ字形をつくる。この時には<ruby><rb>両肩</rb><rt>りょうかた</rt></ruby>と両腕とでＵの字になることが要領じゃ、<ruby><rb>徒</rb><rt>いたずら</rt></ruby>にここが直角になることは血液<ruby><rb>循環</rb><rt>じゅんかん</rt></ruby>の上からも<ruby><rb>又</rb><rt>また</rt></ruby>樹液運行の上からも必要としない。この形になることが要領じゃ。わかったか。六番」

兵卒六「わかりました。カンデラーブル、Ｕ字形であります。」

大将「よろしい。果樹整枝法その三、カンデラーブル、はじめっ一、二、一、二、一、二、一、二、やめい。」

大将「よろしい。果樹整枝法その四、又その一、水平コルドン。はじめっ。一、二、一、二、一、二、一、二、一、やめい。」

大将「次はその又二、直立コルドン。これはこのままでよろしい。ただ呼称だけを用うる。一、二、一、二、よろしいか。八番。」

兵卒八「直立コルドンであります。」

大将「よろしい。果樹整枝法、その四、又その二、直立コルドン、はじめっ、一、二、一、二、一、二、一、二、一、やめい。」

大将「次は、エーベンタール、<ruby><rb>扇状</rb><rt>せんじょう</rt></ruby>仕立、この形をつくる。このエーベンタールのベースとちがう所は手とからだとが一平面内にあることにある。よろしいか。九番。」

兵士九「はいっ。果樹整枝法その五、エーベンタールであります。」

大将「よろしい。果樹整枝法、その五、エーベンタール、はじめっ、一、二、一、二、一、二、一、やめい。」

大将「次は果樹整枝法、その六、<ruby><rb>棚</rb><rt>たな</rt></ruby>仕立、これは日本に<ruby><rb>於</rb><rt>おい</rt></ruby>て<ruby><rb>梨</rb><rt>なし</rt></ruby><ruby><rb>葡萄</rb><rt>ぶどう</rt></ruby>等の<ruby><rb>栽培</rb><rt>さいばい</rt></ruby>に際して行われるじゃ。棚をつくる。棚を。わかったか。十番。」

兵士十「果樹整枝法第六、棚仕立であります。」

大将「よろしい。果樹整枝法第六棚仕立、はじめっ。一」

（兵士ら腕を組み棚をつくる。バナナン大将<ruby><rb>手籠</rb><rt>てかご</rt></ruby>を持ちてその下を<ruby><rb>潜</rb><rt>くぐ</rt></ruby>りしきりに果実を収む。）

バナナン大将「実に立派じゃ、この実はみな<ruby><rb>琥珀</rb><rt>こはく</rt></ruby>でつくってある。それでいて琥珀のようにおかしな<ruby><rb>匂</rb><rt>におい</rt></ruby>でもない。<ruby><rb>甘</rb><rt>あま</rt></ruby>いつめたい<ruby><rb>汁</rb><rt>しる</rt></ruby>でいっぱいじゃ。新鮮なエステルにみちている。しかもこの宝石は数も多く人をもなやまさないじゃ。来年もまたみのるじゃ。ありがたい。又この葉の美しいことはまさに<ruby><rb>黄金</rb><rt>きん</rt></ruby>じゃ。日光来りて葉緑を<ruby><rb>照徹</rb><rt>しょうてつ</rt></ruby>すれば葉緑黄金を生ずるじゃ。<ruby><rb>讃</rb><rt>たた</rt></ruby>うべきかな神よ。」

（将軍籠にくだものを<ruby><rb>盛</rb><rt>も</rt></ruby>りて<ruby><rb>出</rb><rt>い</rt></ruby>で来る。手帳を出しすばやく何か書きつく、特務曹長に<ruby><rb>渡</rb><rt>わた</rt></ruby>す、順次列中に渡る、<ruby><rb>唱</rb><rt>うた</rt></ruby>いつつ行進す。兵士これに続く。）

バナナン大将の行進歌

合唱「いさおかがやく　バナナン軍

マルトン原に　　たむろせど

<ruby><rb>荒</rb><rt>す</rt></ruby>さびし<ruby><rb>山河</rb><rt>さんが</rt></ruby>の　すべもなく

<ruby><rb>饑餓</rb><rt>きが</rt></ruby>の　<ruby><rb>陣営</rb><rt>じんえい</rt></ruby>　　日にわたり

夜をもこむれば　つわものの

ダムダム弾や　　葡萄弾

<ruby><rb>毒瓦斯</rb><rt>どくガス</rt></ruby>タンクは　<ruby><rb>恐</rb><rt>おそ</rt></ruby>れねど

うえとつかれを　いかにせん。

やむなく<ruby><rb>食</rb><rt>は</rt></ruby>みし　将軍の

かがやきわたる　勲章と

ひかりまばゆき　エボレット

そのまがつみは　<ruby><rb>録</rb><rt>しる</rt></ruby>されぬ。

あわれ二人の　　つわものは

責に死なんと　　したりしに

このとき雲の　　かなたより

神ははるかに　　みそなわし

くだしたまえる　みめぐみは

新式生産体操ぞ。

ベースピラミッド　カンデラブル

またパルメット　エーベンタール

ことにも二つの　コルドンと

棚の仕立に　　　いたりしに

ひかりのごとく　<ruby><rb>降</rb><rt>くだ</rt></ruby>り来し

天の果実を　　　いかにせん。

みさかえはあれ　かがやきの

あめとしめりの　くろつちに

みさかえはあれ　かがやきの

あめとしめりの　くろつちに。」

幕。