なつかしい丘の上、 棕呂の若葉のそよぎに、小鳥の唄。 傾むきつくす夕月も、 見る〱最後の接吻を残して、 深い々々、海のかなたへ 去らうとする、 なつかしい丘の上に、Kの君を持つ心よ! 夢を語るやうな春の風に 顫へる。 葉ずれの音に眼が狂へば、 西へ東に、足が動きだす……………… 夫れと思ふ俤が、更に眼にとまらぬ。 胸を抱いて、若かい悲しみに沈む。 林の間に、夜の色が浮び出した。―― 黒ろい怖ろしい影は 私の魂を厭し始める。 もう是れが私のKの君に対する最後だ!