<ruby><rb>黄昏時</rb><rt>たそがれとき</rt></ruby>を四五分すぎたあと、

薄闇を縫ふて、紅い々々<ruby><rb>燈</rb><rt>ひ</rt></ruby>の華が、

冬咲きの仏相花のやうにちらつく。

昔の栄華を夢見る古るい街、

傾むいた軒を並べて、

底深く静まりかへる。

蔦の生へた石垣からは、

亡びの色調を帯びた虫の歌。また、

<span data-tei-rend="bouten 傍点 right" style="text-emphasis-style: filled sesame; text-emphasis-position: over right">たく〲</span>と流れる溝のなげかひ。

私は古るい街の巷に迷ひこんだ、

何処かへ逃げ道を見出さうとした、

古るい街は逃すまいと抱きつく。

私と亡びゆく古るい街、

その間に永い哀情が横たへ、

深かい〱闇に沈んでゆく。