南の国の黄昏れ、 空は紅き笑ひを残して静かなり。 想思樹の葉のねむたげにうなだれ、 かすかなるうめきをやする。 ああ淋しみ、心をなす、植民地の黄昏! 椰子の並木を縫ひて、 灯火は紅き花と見まがう。 その時我が耳に訪づれし悲歌の哀さよ。      ◉ 小暗き森の奥に、 時々もれくる鬱憂の月影。 木の葉は眠りより醒めて、 あやしき夜色に顫へ出す。 忽ち響く恐ろしき獣の声! よろづのものは皆醒めはてぬ。 声かれて歯白ろき、獣と思へば、 吾はたゞ恐怖の為めに伏して在るのみ!      ◉ 白き墓たちならぶ国! まへには荒磯の潮騒、……… 絶えず訪づれ、 うしろには歓楽の歌きこえて、 また墓石を濡す、 哭泣の哀れも湧く。 こゝにして、悲しめる者相集ひ、 匂ひよき酒を椰子の実に盛り、 互に口をすぼめて飲む時の うれしさよ! 死は遂に吾れを慰め、……… 人生の極みをのぞき見る。      ◉ 小鳥は、秋の空にさ迷ふ、 吾れは、一つの悲哀をとらへ、 小さき胸に隈なく乱る。 迷ひ、悲しみ、何の益ある、 小鳥よ来れ!手に手をとりて、 花咲き笑ふ南へさらむ。