パーティ　丹羽（正吉）、松濤
昭和十六年六月八日
土合（六・〇〇）―南稜テラス（八・一〇～八・三〇）―一ノ倉尾根のピーク（一四・〇〇～一四・二〇）―土合（一七・〇〇）
　テラスに揃ってキジを撃ち、ここでアンザイレンしておもむろに取り付く。緊張しているにもかかわらず、闘志が一向ないので三ツ峠の悪場に取り付いているようだ。チムニー、その上の壁、大分手間どった。南稜が上部笹原に連なる付近は、直下に烏帽子沢を俯瞰してまことに気味が悪い。それにきょうは風が強く、いくども振られて胆を冷やした。笹原に入ってザイルを解き、握り飯を噛りながら笹に身を埋めてしばらくトカゲする。
　これからの斜面は悪くないが、抜かると烏帽子沢をダイヴするので慎重に登った。平田君の落ちたピークの上で服装を整え、沖ノ耳へ向う。尾根は素敵に風が寒く、土合に着いた時には、ああ、とうとう風邪を引いてしまった。山の家泊り。翌日は雲量零の大快晴であったが、かえって怠れて、マチガ沢でトカゲして午後の汽車で帰京した。