　私にはこれという友人がなく、つきあいらしい交際もしたことがない。
　昔から独りぼっちといった感じである。
　女の人で当時絵を進んでやるという人もほとんどと申してよいくらい少なく、たまたまあったところで自分よりも歳下の女性と話し合う気もおこらず、また男の方だと、画学校や絵画の集会などではとにかくとして、親しく交際するということは思いも寄らなかったものである。だから絵の方でもまあ、独りぼっちの独り研究といった形であった。
　かえって女流の歌人だとか、絵にあまり関係のない女の方とつき合うほうが多かった。
　私の友人は、支那の故事とか、日本の古い物語や歴史のなかの人物である。
　小野小町、清少納言、紫式部、亀遊、税所敦子――そのほかいくらでもある。
　楊貴妃、西太后……数えればきりがない。
　心の友は永久に別れることのない友である。
　私は友人に逢いたくなると画室に入って、その人たちと対坐する。
　彼女たちは語らない。
　私も語らない。
　心と心が無言のうちに相通じるのである。
　私はたのしい友人をこのようにしていつも身近に置いてある。
　だから、沢山の友人を持っていると言ってもいいのかも知れない。