おまへの歯は　よく切れるさうな
山々の皮膚が　あんなに赤く
夕陽で爛らされた鐃鉢を
焦々して　摺り合せてゐる
おまへはもう　暗い部屋へ帰つておくれ
おまへの顎が、薄明を食べてゐる橋の下で
友禅染を晒すのだとかいふ黝い水が
産卵を終へた蜉蝣の羽根を滲ませる
おまへはもう　暗い部屋へ帰つておくれ
色褪せた造りものの　おまへの四肢の花々で
貧血の柳らを飾つてやることはない
コンクリートの護岸堤は　思ひのままに白けさせよう
おまへはもう　暗い部屋へ帰つておくれ
ああ　おまへの歯はよく切れるさうな