人手なき独り者
治兵衛の麦はせに
飛火して燃えうつり
泡を喰った治兵衛は
麦束もて火を叩く
風つのり火はさかり
麦はせは凡て燃え
治兵衛は大火傷
やけどした六十男
治兵衛はわめきつつ
こげのこる麦の穂を
かき集めかき集め
かなしさと痛さとに
大声で泣きわめく
一九三四・六